哲学

「暗黒啓蒙」と「無知の知」は言葉の成り立ちが似ている

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2021年3月、世間で「clubhouse」が話題になっていた頃、その対極とも言えるコミュニティ「Twitter2」の読書版で話題になっていたという理由から「暗黒の啓蒙書」という本を暇つぶしに(批判的に)読んでいたときのことです。

「暗黒啓蒙」という言葉自体は「暗黒」と「啓蒙」という前後の言葉に矛盾を抱えていますが、それは著者自身も狙って命名していることが書かれています。

「啓蒙」と「進歩的な啓蒙」のあいだには、ほとんどとらえようのないわずかな違いしか存在しない。というのも、啓蒙の光があたりを照らすプロセスは時間的な前後関係を生みーそしてその光はかならず、それ自体にたいして注がれていくことになるからだ。つまり啓蒙とは、それ自体にたいしてその正当性を与えていく性格をもったものであり、その啓示はかならず、「自ずから明らかな」ものなのである。したがって退行的であったり、あるいは反動的であったりするような「暗黒の啓蒙」などといいだすのだとしたら、語の本質にかかわるような矛盾になりかねない。

ニック・ランド、五井健太郎訳、暗黒の啓蒙書、p.21、講談社

「啓蒙する」ことを「蒙を啓く」とも言いますから、暗黒に回帰していくような名前に皮肉っぽさを感じたのでした。

こうした言葉は、「撞着語法」という修辞技法で説明され、他には「急がば回れ」などがあります。

撞着語法とは、修辞技法(レトリック)のひとつで、意味が矛盾する言葉を意図的に結びつける表現方法である。「対義結合」とも呼ぶ。論理的に矛盾する複数の言葉をかけ合わせることで、人の目や興味をひく表現となり、謎めき・意表・皮肉・深意などの印象を抱かすことができる。「負けるが勝ち」「小さな巨人」などが一般的な撞着語法の例だが、それぞれの価値観や偏見により成り立つ撞着語として「愚かな神」「悲しい結婚式」「長髪の僧侶」などがある。また、ロックバンド「Mr.Children」、お笑いコンビ「ブラックマヨネーズ」も撞着語法を用いて命名されている。

広告デザイン業界用語辞典、撞着語法

「暗黒啓蒙」と同じような成り立ちの言葉としては、「明るい闇」や「暗い光」などがあります。

哲学の分野だと、ソクラテスによる「無知の知」は、「暗黒啓蒙」と言葉の順番まで同じですね。

哲学者は昔から矛盾めいた言葉が好きなのかもしれませんね。

新しい概念を名付けるときには、参考にしてもよいでしょう。

たとえば、「生命力にあふれたゾンビ人間」、のようにです。

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