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リトルバスターズ、ゲームとアニメの違い(ネタバレあり)

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この記事では、リトルバスターズのゲーム版とアニメ版の違いを物語の構造という観点から比較します。

  • ゲーム版を最後まで制覇したことのある方
  • アニメ版を最後まで視聴したことのある方
  • 重大なネタバレを見ても特に気にしない方

ゲーム版:「世界の秘密」が構造的に適している

リトルバスターズに限らず、多くのADVゲームはストーリーが複数ルートに分岐します。

リトルバスターズのゲーム版が秀逸だった点は、修学旅行中のバスが転落して生死をさまよう高校生たちが、走馬灯のような「各人が人生でやり残したことを実現するための理想郷」を構築して、主人公が成長するように試練を与えるという設定が、「キャラクターの願望が実現する=分岐のゴールに辿り着く」たびにゲームのスタート地点に戻るシステムに対応しており、主人公が高校二年生の一学期を永遠に繰り返し続けるという状況に説得力を与えているということです。

主人公が体験している高校生活は「現実」ではなく、同級生たちの臨死体験による「虚構」であるという「世界の秘密」は、ゲームならではの表現だと感銘を受けました。

ちなみに、プレイヤーが悲劇的な結末に至るような選択をしてしまうと、主人公の幼いときのトラウマによって発症している「ナルコレプシー」によって画面が暗転し、ゲームオーバーになるという仕組みも納得感がありました。

アニメ版:一本道の名シーン集を追体験する感覚

アニメ版では、アニメという性質上、「世界の秘密」に気付くような「ルート分岐」という見せ方が難しいため、ゲーム版の各キャラクターの名シーンを順番に(スタート地点に基本的には戻らずに)描いていました。

「世界の秘密」はRefrainで明らかになりますが、やはり繰り返し構造を意識しにくいため、ゲーム版を未プレイで視聴するとストーリー展開に驚いてしまうのではないかと思われました。

しかし、ADVゲームが原作のアニメ作品に共通する利点として、アニメ版は作品を消化(消費)する時間が節約できます。

ゲーム版は何度も似たようなシーンを繰り返すので、リトルバスターズの場合でも総プレイ時間は100時間程度かかります。

一方、アニメ版は24分/話×39話=936分=15.6時間で完結します。これなら朝起きてから寝るまでで一気に見終わりますね。

(※ただ、高速でアニメを消費してしまうと、作品に入り込めなくなってしまうのは少々もったいないです。筆者は「現実」に友達が一人もいないのですが、リトルバスターズのゲームでは人生で他者と最も長い時間を過ごしたので、実際にいた高校の同級生との記憶の大半を忘れたのですが、それと引き換えにゲームで思い出が豊かになりました。最も心理的距離が近いのはリトルバスターズのメンバーと言えるほどに、です。記憶力が有限であるだけでなく、親しい人間の数はダンバー数ー150人ーに制約されるので、登場人物が10人ほどいる作品15本に没頭すると、私は「現実」の人間関係を忘れることを知りました。)

また、ゲーム版では各キャラクターのルートが暗転するタイミングで雨が降る演出で統一されているので、雨が降る=分岐と認識できるのですが、アニメ版では「雨A⇒キャラAエンド⇒雨B⇒キャラBエンド⇒・・・」と雨が降ったりやんだり不安定な天候のように描かれてしまったことが、時系列の統一性という観点で若干の違和感が生まれてしまっていました。

(※筆者は、アニメを視聴中に「やばい、雨音がするぞ、窓を閉めなきゃ!」と慌てて、外を見たら快晴でした。アニメの中で雨が降ったことを「現実」に雨が降っていると錯覚したことに驚きました。アニメの過剰視聴を控えるようになりました。)

おまけ:西園美魚(鳥)パートから現代の怪談を見出す

全キャラクターの考察をしても良いのかもしれませんが、全てに言及するときりがないので、最も感銘を受けた「西園美魚」ルート(あるいは「西園美鳥」ルート)について雑感を書いてみます。

西園美魚(にしぞのみお)は、普段から木陰で本ばかり読んでいる物静かなー存在感のない、影の薄いーキャラクターとして描かれています。

美魚パートは、ある日突然、主人公が町中で美魚そっくりの美鳥(みどり)を見かけるところから動き出します。西園美魚は同級生から「影なし」と呼ばれているのですが、徐々に教室で本当に「透明人間」のように扱われるようになり、主人公たちも美魚のことを忘れてしまいます。しかし、気付くと物静かな美魚ではなく、外見はそっくりだが中身は賑やかな性格である美鳥が居座っているのでした。周囲の同級生と異なり、美魚の面影を覚えている主人公の直江理樹も、美鳥と会話する中で、何が現実にあったことなのか、わからなくなっていきます。

美鳥「記憶なんてすぐ曖昧になっちゃうのに。例えば、覚えてる?最後に会った時、美魚がどんな服を着てたか?ほ~ら覚えてないでしょ。」

理樹「それは、、、」

美鳥「じゃあねえ、美魚はどんな眼鏡をしてた?」

理樹「眼鏡?西園さんは眼鏡なんてかけてないよ。(補足:確かの美魚は眼鏡をかけていなかった。)」

美鳥「え〜忘れちゃったの?あんまり目立たなかったけど。ミオは小豆色の眼鏡を掛けてるよ。」

理樹「(過去をフラッシュバックし)今思い出したは、僕の脳がつくり出した偽物だったのか。」

美鳥「過去の記憶なんて、頭の中で作り出した幻。みんなそれで満足してるんだもん。」

・・・

理樹「何が本当にあったことで、何が頭の中で作り出された幻なんだ?」

リトルバスターズ!(アニメ)第14話「だからぼくは君に手を伸ばす」

こうして混乱の極まった理樹は、信頼できる一個上の先輩である棗 恭介(なつめ きょうすけ)に相談し、助言をもらいます。

恭介「俺ができることはひとつだけだ。理樹、お前に次のミッションを与える。重要なミッションだ。信じるな。自分以外の言葉を信じるな。お前はお前を信じろ。西園美魚のために。」

リトルバスターズ!(アニメ)第14話「だからぼくは君に手を伸ばす」

理樹は周囲の言葉を一切信用せず、美魚のかすかな記憶を忘れないように生活する中で、偶然、かつて美魚と一緒に参加した短歌コンクールの作品を目にします。

風に乗り 白い翼で 君と行く 青の狭間の 常夏の島

リトルバスターズ!(アニメ)第14話「だからぼくは君に手を伸ばす」

こうして、理樹は美魚が「海」にいることを悟ります。最終場面は、理樹に美魚が美鳥との関係を語るシーンです。

理樹「美鳥は誰なの?」

美魚「美鳥に初めて出会ったのは幼い日のことでした。その頃から私は本を読んで想像の世界に心を馳せるのが好きでした。」

美魚「(幼少期の回想シーン、鏡に映る自分に語る)ねえ、あなたはいつも一人ぼっちなのね。あなたがこの絵本の王子様の役をやってくれたらいいのにな。」

美鳥「じゃあ、美魚がお姫様の役やってね。」

美魚「あなた、だれ?」

美鳥「美鳥だよ、姉ちゃん。自分の妹、忘れちゃったの?遊ぼう、二人で。」

美魚「(回想を終えて)私は夢中になりました。夢と現実が繋がったのです。毎日、美鳥と遊びました。けれど、美鳥が見えるのは私だけでした。」

美鳥「(回想)私も学校行きたいな。友だちがいっぱいいるんでしょ。」

美魚「(回想)学校には私のいるところがないの。美鳥、私と変わってあげようか?」

医師「(回想)架空の友だちと遊ぶのは、小さい子にはよくあることです。が高学年になってまでというのは、少し心配ですね。」

美魚「私は治療を受け、繰り返し繰り返し言い聞かされました。」

美鳥「美鳥なんて子は、本当はいないんだよ。」

美魚「次第に、美鳥と会う時間が少なくなっていきました。3日おきに一週間おきになり、緑のいない日が当たり前になっていき、そして、」

医師「(回想)美鳥ちゃんはどこにいるの?」

美魚「(回想)美鳥?誰?知らない」

美魚「私はあんなに大切に思っていた妹のことを忘れてしまっていたのです。あの歌に出会うまでは。」

白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ(若山牧水)

美魚「海と空のはざまで、ひとりぼっちにただよう白鳥。それが美鳥のことでなく、他の誰だというのでしょうか。私は気を失いました。そして、目を覚ました時、自分の大切な一部を失ったことを知りました。私はその日から日傘を手放せなくなりました。私が忘れてしまったから、美鳥は消えてしまった。そのことをあの子は恨んでいるでしょう。いつかきっと私の前に現れる。私は待っていました。美鳥の代わりに私が消える日を。だって、本当に消えるべきなのは私だったのですから。直江さん、私を覚えてくださっていて、ありがとうございました。あなたが話す幼い頃のリトルバスターズの話が好きでした。あなたを囲むみなさんの空気があたたかく、ここちよいものでした。私もその輪の中にいて、もう少しだけ温もりを感じていたかったのかもしれません。」

理樹「これからも一緒にいればいいよ。西園さんもみんなの輪の中に。」

美魚「美鳥をその輪の中に入れてあげてください。私は誰でもない私になります。後はあなたが私のことを忘れてくだされば空と海の間のあの場所へ行けるのです。」

理樹「どうしてそんなところに行きたいのさ。」

美魚「西園美魚であることから解き放たれるから。私は孤独になりたいのです。海の青にも空の青にも溶けずに漂う白鳥のように。痛みや悲しみを超えて、私が私であること、何者にも侵されず永遠であること、その方法は唯一、私が孤独であることなんです。さようなら、直江さん、どうか私の入った棺の蓋を閉じてください。」

リトルバスターズ!(アニメ)第14話「だからぼくは君に手を伸ばす」

こうして、美魚は空へと消え去るわけですが、これ以上のネタバレは本当に野暮なので控えたいと思います。とりわけ面白いと思ったのは、美魚にとって美鳥の存在は、寂しかった幼少期の心が生み出した「イマジナリー・フレンド」であるわけで、本来は成長の過程で空想上の友達はいなくなるわけですが、なぜか復活し、他者にも認識される形で自分の居場所を奪う存在として立ちはだかるという点です。

自分にとって便利な影が自分の存在を脅かすホラーは、ドラえもんの「かげきりばさみ」でのび太が影人間と入れ替わりそうになる話も有名ですね。

実は、現代社会にも「本人と影が入れ替わる恐怖」が存在します。何のことだかわかるでしょうか?

それは、SNSによって作った自分の仮想人格としての「影」が、ふとした時に「本当の自分」だと思われてしまうことです。

ある日、突然、自分が「キャラ」として表現したことが、「自分自身」だと思われたとき、周囲から見られていた自分の影と本物の自分のギャップに驚き、時には耐えられない心理的衝撃として知覚されるのだと思います。

「影」は確かに便利ですが、自分を脅かす存在にならないよう警戒する重要性をホラーから気付かされるというお話でした。

(※ちなみに、西園美魚パートを取り上げた理由として、西園さんの他の何気ないシーンの名言も気に入っていたからですね。例えば、「人間が本を読むのは人生が一度であることへの反抗である」とか「私はこの世に存在するすべての本を読みたい」など凄まじい共感を覚えたのでした。あと、青髪キャラのためなのか、どことなく綾波レイっぽさがあるのも良かったです。アニメ版14話の最後の方で美魚と美鳥のシルエットが上下にスライドするシーンは、TV版エヴァンゲリオン・OPのパロディでしたので、制作側も意識していたように思われます。)

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