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2011年に開催されたニコニコ学会βを顧みる

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ニコニコ学会βとは?

「ニコニコ学会」は、2011年12月6日に「第1回ニコニコ学会βシンポジウム inニコファーレ」として、約7時間にわたるイベントとしてオンラインとオフラインを融合したイベントとして初開催されました。

本記事は、インターネット上で「ユーザ参加型コンテンツ」が人気を獲得する時代において、現在のヒントになるエッセンスを簡潔に抽出することを目標としております。

現代は「プロ」と「アマ」の区別なく創作物を発表できる自由な場所が拡大しており、アカデミアの分野においても、自由に研究発表できる場所があれば、「ユーザ参加型研究」が実現するというアイデアに基づいて開催された学会です。

【参考】ニコニコ学会について

ニコニコ学会βの理念

「ニコニコ学会β」は堅苦しいイメージを伴う「学会」のβ版として、楽しんで参加できるというニュアンスが込められており、以下の理念が根底にあります。

  • ユーザー参加型研究の世界を作り上げよう!
  • ニコニコ学会βはあなたの学会です
  • ニコニコ学会βは動画での発表を推奨します
  • ニコニコ学会βはユーザー参加型の価値を追求します
  • ニコニコ学会βはオンラインとオフラインを融合した学会です
  • ニコニコ学会βは研究の価値を多様化します
  • ニコニコ学会βはβ版です
  • ニコニコ学会βには終わりがあります

詳しくは「ニコニコ学会とは」をチェックしていただけると理解できますが、特に重要な点として、今から十年前に「誰でも参加可能で、オンラインとオフラインを融合した先進的な学会」が試験的に実施されていたという事実があります。

弊社(動画制作会社エスクリップ)は、「アカデミアを動画コミュニケーションで促進する」ことを目的の一つに掲げて活動しているのですが、その方向性は極めて「ニコニコ学会β」と似ていることに驚きました。

既に「ニコニコ学会β」は、公式Twitterが約一年ほど更新が止まっており、活動が再開するかは不明なことが残念ですが、研究に対する認識に変化をもたらした点で素晴らしい取り組みだったと思われました。

公式ロゴも、クリエイティブコモンズの規定に従う限りにおいて自由に使用しても問題ないとのことでしたので、ページに使わさせていただきました。この自由さが「ニコニコ学会β」の魅力だと実感しました。

「第1回ニコニコ学会βシンポジウム inニコファーレ」の内容

「ニコニコ学会β」の内容は、1stセッションから5thセッションに分かれていました。

  1. 1stセッション 「作るを作る」
  2. 2ndセッション「作るアーキテクチャを作る」
  3. 3rdセッション「研究100連発」
  4. 4thセッション「未来世紀のピアピア動画」
  5. 5thセッション「研究してみたマッドネス」

1stセッション

コンテンツの(川上量生さんによる)定義が「わかりそうでわからないもの」とするならば、猪子寿之さんやチームラボの存在は「論理的に芸術作品を創造しているのでは?」という論点で、川上さんと猪子さんが平行線を辿り続けている様子が面白く、進行の江渡浩一郎さんが大変そうでした(笑)。

2ndセッション

トヨタ生産方式と対比する形で、ユーザ参加型のミク的生産方式が重要ではないかという議題で、「ニコニコ動画」と「初音ミク」について、開発者側の視点、特にアーキテクチャに関する観点で議論していました。

3rdセッション

5名の研究者によるスピード感あふれるプレゼンテーションに圧倒されました。

  • 五十嵐健夫さんの「ユーザの描きそうなデザインを予測して、3Dモデルを描画するソフト」
  • 宮下芳明さんの「書道のかすれやにじみ、炎などトレースできる描画ソフト」
  • 中村聡史さんの「動画へのコメントから、視聴者の喜怒哀楽をダイナミックに表示できる検索エンジン」
  • 塚田浩二さんの「多視点で宝石のような商品などの立体映像を作れるディスプレイ装置」
  • 暦本純一さんの「遊戯王のように描かれたキャラクターを立体表示するカード」

約10年前に研究されていたことに驚くレベルのハイクオリティな発表を100連発受けました。

4thセッション

野尻抱介さんのSF小説や、剣持秀紀さんのVOCALOID開発、後藤真孝さんのVocaListenerに関する研究を通じて、「歌声情報処理」の未来と「動画投稿が研究に与える影響」を議論しておりました。

後藤さんは人間の歌声を真似て歌う音声合成システムを研究されていたのですが、研究成果をニコニコ動画にアップロードしたところ、予想以上の反響を受け、思いがけない人たちと研究でコラボするようになり、考えたこともなかったコメントなども受け、ワクワクする経験ができたとのことでした。

研究について動画投稿した動機は、以下のような要素があったそうです。

  • 研究成果を知っていただく重要性
  • 人の記憶に残す重要性
  • 歌声合成技術の潜在能力を示す
  • 中・高・大学生へのアピール
  • 研究分野、職業があることに気づいて欲しい
  • 将来の進路の選択肢の一つとして、考えてもらえたら嬉しい

ニコニコ動画の反響がきっかけになり、野尻抱介さんの小説で後藤真孝さんをモデルにしたキャラが描かれたことについて「研究者としてSF小説に登場できたのは嬉しい」とし、「研究分野の活性のために同分野の研究者を主人公にした映画、ドラマ、小説などが有効ではないか」などと持論を述べられておりました。

研究紹介動画を行う動画制作会社としては、動画が研究に良い影響を与えた事例を知れたことは参考になりました。

5thセッション

本職が研究職の方も、そうではない方(野生の研究者)も、大勢の視聴者が見守る中で、緊張されながらも堂々と研究発表されておりました。

このセッションは、審査員や企業からの表彰もありましたが、入賞したテーマは、ロボット制御のようなハードウェアに踏み込んだ研究内容の人気が高かったです。

特に「拍手して場を盛り上げる人間の腕型ロボット」は外観自体がマッドでした。

勿論、ソフトウェア中心の発表も、「クリスマスに関する情報を自動ブロックする非リア充向けインターフェース」のような発想重視の研究も大変面白かったです。

Postコロナ時代の学会の在り方とは?

「ニコニコ学会β」のように、研究者でなくても研究に参加できるという学会は、消費的な生き方から生産的な生き方に価値観がシフトしつつある現代にマッチする可能性を感じました。

「論理的な思考」を養うという意味でも、気になるテーマを自分で研究して発表することは、能動的であり、学習効果が高いと予想されます。

また、アカデミアの知見を動画のように伝わりやすい表現方法で発信することは、最先端の知に興味を持っている潜在的な層を刺激するため、長期的には学問全体を発展させる可能性もありえます。

第1回ニコニコ学会βの延長線上で現代にありうるアカデミアを模索する思考素材として、本記事がお役に立ちましたら幸いです。

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