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輪るピングドラムはdアニメストアの無料期間に見るのがおすすめ

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輪るピングドラムの劇場版「RE:cycle of the PENGUINDRUM」が2022年に公開予定です。

それに合わせて、YouTubeでTVアニメ版の無料配信もされていますが、期間限定配信です。

無料配信を見逃した方、TVアニメ版を見ていない方におすすめなのが、dアニメストアです。

dアニメストアでの作品紹介では、アニメの内容がキーワードとともに簡潔にまとまってます。

初回31日間は無料で、それ以降も月額440円と安く、アニメ以外あまり見ない方に向いてます。

(筆者は無料期間以降も継続しましたが、無料期間中に見たい作品を一気に見るのが理想です。)

この記事は、dアニメストアの紹介が目的です。以下はおまけで書いた映像の感想です。

最近は、OP曲の「ノルニル」 と「少年よ我に返れ」を無限ループして聞いています。

輪るピングドラムは、日本社会が抱えていた強烈な「負」を総括するような思想的意義の深い作品でした。

人間同士のつながりが希薄化する中、いかに他者と「家族」のような関係を築けるかが大きなテーマです。

日本はもうこれ以上豊かにはならない。国家や社会という物語による生の意味付けを失った世界を、私たちはどう生きればいいのか。その問いに対して『ピングドラム』が一貫して主張し続けるソリューションは「家族」である。

本作のキャラクター全員に共通するのは、幼少時に親の愛に恵まれなかったこと(これは後でも触れる)、そして失われた親の愛を「家族」の再構築によって代替しようとする意識だ。国家や社会という大きな枠組みでの物語を完全に失った今、日本で生きる我々のアイデンティティを保証するのは身近な人間や共同体からの承認以外にありえない。にもかかわらず、生きていく上で必要な承認の、最も根幹の部分である親の愛すら得られないという絶望にさらされた人間たちが、己を取り巻く過酷な運命と対峙しながら「生存戦略」としての自分の居場所、すなわち「家族」を求めてもがく姿を描いた作品。それが『輪るピングドラム』なのである。

京都大学新聞、〈企画〉アニメ評 輪るピングドラム(2012.02.16)

印象的だったのは「こどもブロイラー」という施設で「いらない子供(達)」が「透明な存在」にされるシーンです。

本作ではメインの登場人物以外は個性のない「ピクトグラム」で表現されていることも演出として面白く感じました。

「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」や「生存戦略(せ〜ぞんせんりゃく〜)!」とも繰り返し言われます。

こうした記憶にこびりつくセリフも、否定的な意味ではなく、肯定的な意味で使われているというのもポイントです。

存在するよりも前にあらかじめ消されてしまった(非)存在とは、誰からも愛されず、誰にも何も贈与されず、誰にも発見されないことによって、存在することさえできないネガティブなものたちではなく、自分自身が純粋な贈与であり、贈与の媒体であることによって、積極的に顕在化されることのない何ものかなのだ、と言うことができるようになるのです。

けいそうビブリオフィル(株式会社勁草書房)、古谷利裕、虚構世界はなぜ必要か?SFアニメ「超」考察 第25回(最終回)「ここ-今」と「そこ-今」をともに織り上げるフィクション/『君の名は。』と『輪るピングドラム』 (4)、「何者にもなれない者」をポジティブに反転する

物語の転換点になる「第15駅 世界を救う者」がとりわけ重要なエピソードで、「運命の乗り換え」が描かれています。

ゆり「あのタワーがあるかぎり、私は自由になれない。私のパパは有名な芸術家。」

パパ「ゆりは美しいものが好きかい。」

ゆり「ええ、パパ。」

パパ「じゃあ、美しいものをつくるパパは好きかい。」

ゆり「もちろん大好きよ。」

パパ「私もだよ。いや、美しいものしか愛せない。芸術家だからね。ゆり、おまえはなんて、醜いんだろう。醜いものは誰からも愛されない。ママを見ただろう。ママはゆりを生んでからどんどん醜くなってしまった。だからもうこの家にはいられず、あんなことになってしまったんだよ。」

ゆり「ママ。」

パパ「ママは醜く、そして愚かだった。パパの芸術が理解できなかったんだ。いいかい、ゆり、美しくない子供は誰からも愛されない。その資格がないんだよ。ゆり、お前は醜いこのままでは誰にも愛されない。もちろんパパもゆりを愛せない。」

ゆり「私はそんなに醜いの。」

パパ「ママの子だからね。でもパパならゆりの身体から余分なものを取り除いて、美しい子供にすることができる。かのミケランジェロが大理石の中から見事なダヴィデ像を掘り出したようにね。」

ゆり「ほ、ほんとう?」

パパ「ああ、だからお願いがあるんだ。パパの手でゆりを美しく改造させておくれ。パパにお前を愛させて欲しい。パパは美しいものしか愛せないのだから。」

ゆり「パパ。」

パパ「パパはゆりを愛したいんだよ。」

ゆり「パパ、私なんでもするよ。なんでもするから、私を愛して。」

パパ「いい子だゆり。いい子だ。パパも嬉しいよ。」

ゆり「パパのアトリエの窓からは、いつもあのタワーが見える。」

輪るピングドラム、15話 世界を救う者

以前、映画dinerについて、「親ガチャ」を引き合いに出しつつ、「家族」=「運命」であって、変えられないと書きました。

輪るピングドラムでは、父親から虐待を受けていたキャラクター(ゆり)が、「父親など最初から存在しなかった」世界へと「運命の乗り換え」をするのですが、それと同時に父親が建てた「いつものあのタワー」=「ダヴィデ像」ではなく、我々の住んでいる日本ではおなじみの「東京タワー」が代わりに建っています。現実の延長にアニメという虚構があるはずなのに、アニメこそ現実であり、現実だと思っていた今の状況のほうが虚構なのではないかと思わせてしまうリアリティがあります。

唐突だが、筆者はアニメ『輪るピングドラム』〈※10〉15話をはじめて見たとき、とても衝撃を受けた記憶がある。本作で描かれる世界では、東京に巨大なダヴィデ像のタワーが建っている(もしくは建っていた)。そして本作品では、世界改変能力を持っている桃果というキャラクターの「運命の乗り換え」によって、ダヴィデ像ではなく代わりに東京タワーが建っている世界線に移動する経緯が描かれる。このとき、私は一瞬、今自分が生きているこの(東京タワーのある)世界は、ひょっとして桃果が引き起こした「運命の乗り換え」後の世界なのではないか、という目眩のような感覚を覚えた。私たちは、桃果と一緒にこの世界線にやってきたのではないか、と。

もちろん、これらは錯覚でしかないだろう。しかし、このとき確かに、アニメというフィクションがリアルを異化させる、言い換えればフィクションが現実認識を変容させたような気がしたのだ。フィクション(桃果による世界改変)こそが、この私たちの現実世界の可能性の条件である、という転倒かつ錯乱した認識。

kzwmn、現実を侵食するフィクション【星雲賞ノミネート記念:『ダークウェブ・アンダーグラウンド』】

また、アニメ(というメディア)に「はまる」という行為自体が、一種の現実の上書きであり、記憶の書き換えに他ならず、具体的な症状としての「両親否認(今まで一緒の家に住んでいた、自分の親だと思っていた存在は、実は本当の親ではなく、本当の親はもっと違う別のところで幸せに暮らしているから、自分もそこに行かなければ幸せになれないという妄想)」は、輪るピングドラムがリアルタイムで放映されていた2011年から10年が経過した2021年になっても一種の時代精神として色濃く残り続けていると思われるような風潮(≒ツイッターのタイムライン)です。

そんなことを考えていた先日のことです。TVでTBSの番組で「週刊さんまとマツコ[解][字] 元札付きのワルだらけの弁当店が爆売れ!の謎に迫る」という、「おべんとうの玉子屋」という会社の紹介映像が放映されていたのをたまたま見ていました。

元々不良だった人たちが、弁当配達の仕事を通じて人から感謝されることで、それまで「ありがとう」と言われてこなかった従業員も人間力を身につけていき、社会貢献するようになったというエピソードで、弁当も美味しそうで好感を持ちました。

輪るピングドラムでは、「企鵝の会」という団体が、こどもブロイラーで「透明にされてしまいそうな子供達」を救うために武力行為に走り、社会への憎悪から事件を起こしてしまいます。企鵝(きが)とは、「ペンギン」のことで、ピングドラム(=ペンギン+ドラム)は「オウム」を参考とした説もありますが、一方「ひよこ」が描かれた配送車が弁当を運んでいる。コロナ禍でストレスにより子供への暴言や暴力が増えているという相談員の声があり、労働環境にも影響が表れている中で、透明にされてしまいそうな所在なさ(どこにも居場所のない感覚)を抱えている人たちに対して、社会と折り合いをつけつつ向き合っていく姿勢が問われています。そうした意味でも、上記のTV番組のような事例紹介と同様に「輪るピングドラム」の劇場版にも「世相を映し、悩む人間に『運命の乗り換え』を擬似的に体験させる」ことで、単なる問題提起を超えた現実認識と、問題解決につながるヒントの一端を生じさせるという、映像・メディアの本質的な役割が問われていると思うのでした。

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