カフカの作品は青空文庫なら無料で読める

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2021年10月31日、最高裁裁判官の国民審査に行きました。

その後、積ん読していたカフカの「審判」を読みました。

本編は理解できませんが、「掟の門」は面白かったです。

掟の前にはひとりの門番がいる。あるとき田舎からひとりの男がこの門番の所へ来て、なかへはいらせてほしいと頼んだ。門番は、今すぐはいらせるわけにはいかないと云い、男は考えていたが、それでは後ではいらせてもらえるかと訊ねると、『後ならいいかもしれないが、今はいけない。』と門番が云った。掟の扉はいつも開けっぱなしで、門番はわきへ退いているものだから、男は身体をかがめて、なかの様子を窺おうとしたが、これをみつけた門番はからからと笑い、『そんなにはいりたければ、わしの命令に逆らって、はいるがいい。断っておくがわしには権力がある。しかもこれで一番低い階級の門番にすぎないのだ。広間という広間にはそれぞれ門番がいて、先へ行くほど権力が大きい。三番目の門番をみただけで、わしなどはぶっ倒れてしまうのだ。』これは田舎の男が予想だにしなかった障碍である。掟は常に、また、すべての人々に、開放されているはずだが、と男は考え、しかし、毛皮の外套にくるまった門番の、大きな尖り鼻や長くほそく韃靼人を思わせる黒い髪をつくづく眺めているうちに許可が出るまで待ってみようという気になった。

フランツ・カフカ、審判、p.248、角川文庫

フランツ・カフカと言えば「不条理」ですから、延々と続く門のイメージは「城」とも共通する遅々として進まない手続きのイメージでもあり、仕事に手こずっているときなどに、「自分も門番に遮られているな」と客観視すると楽しめたりします。

より直接的なイメージとしては、ポケットモンスターの四天王戦が延々と続いていく、という感じですね。

ここで角川版の本の紹介をして、Amazonのリンクを張ることもできますが、今回はあえて紹介しません。

本をAmazonで注文したときは知らなかったのですが、青空文庫なら「審判」も含めて、カフカの作品は無料でスマホなどで読めるのです。カフカ以外にも国内外で著名な作家の有名作品が無料で読めます。

「掟の門」で、男は何度頼んでも門を通過することが出来ず、門の前で老いていき、最終的に無念の中で死んでしまいます。

最初のうちは、自分の不幸な運命を呪詛しわめいたが、年が寄って来ると、ただぶつぶつぼそぼそ呟くだけになった。頭が子供みたいになり、長年にわたって門番を観察しているうちにその毛皮の襟に蚤が一匹いることがわかり、門番の気を変えさせるよう尽力してくれなどと、蚤に向って歎願する有様。ついに、視力が鈍って来た。本当にあたりが暗くなったのか、眼が霞んだだけなのか、自分では見当がつかない。しかし今、掟の門をつらぬき、一条の不滅の光が、暗黒のなかに輝く。それを彼は認めた。もはや、生きる望みは絶えた。死に先立って、生涯のあらゆる経験が、ひとつの質問となって脳裡に凝集する。これは未だかつて門番に対し放ったことのない質問である。硬直した身体を持ち上げる気力も失せ、眼で合図をした。高さがちがうから、男は見下ろされるという不利な形勢になり、門番はふかく身体をかがめねばならぬ。『今さら君は何が知りたいのか?ずいぶんしつこい男だな。』『あらゆる人が掟を求めています、』と男は云った、『だのに、長年の間、私以外に誰ひとりはいることを求める人がなかったのは、なぜですか?』門番は、男の死期が近いことを知り、薄れていく男の聴力にも届く嘲笑のわめき声で、『これは君だけの入口なのだから、ほかの人間がはいらせてもらえないのも道理さ。さあ、わしも、門を締めて引き上げよう。』

フランツ・カフカ、審判、p.249-250、角川文庫

青空文庫という門をくぐるときは、厳しい門番も、ペイメントウォールもありません。

気になる名作は死ぬ時に後悔しないように時間と体力のあるうちに読んでみましょう。

不朽の作品からは、流行りのベストセラーとは違った面白さを体感できると思います。

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