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ピーター ティールの思想と哲学、本「zero to one」から名言を紹介(完全版)

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ピーター ティールは、起業家であり、投資家であり、思想家です。

  • PayPalの創業者
  • Facebookの初外部投資家
  • THIEL Fellowshipの主宰者

この記事では、書籍「ZERO to ONE」を読み解きます。

新しい何かを作るより、在るものをコピーするほうが簡単だ。

おなじみのやり方を繰り返せば、見慣れたものが増える、つまり1がnになる。

だけど、僕たちが新しい何かを生み出すたびに、ゼロは1になる。

(中略)

本書は、新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるかについて書かれた本だ。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、まえがき

隠れた真実

ティールの思想を紐解くキーワードは、「隠れた真実」です。

賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第一章「僕たちは未来を創ることができるか」

この質問に対する回答として、ティールは3つの「感心しない」回答例を挙げます。

  • この国の教育制度は崩壊している。今すぐ立て直さなければ。
  • アメリカは非凡な国家だ。
  • 神は存在しない。

なぜ、これらの回答は「感心しない」のでしょうか。ティールは、最初の2つは真実かもしれないけど、多くの人が賛成するだろうし、3つ目はおなじみの論争の片方に賛成しているだけだからだと説明しています。

それでは、正しい答えは何かというと、ティールは次のように定式化します。

世の中のほとんどの人はXを信じているが、真実はXの逆である。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第一章「僕たちは未来を創ることができるか」

「未来は現在と違う姿になっている」と想定すれば、異なる視点ー現在からの視点と未来からの視点ーで世の中を見ることでよりよい答えに近づく、とティールは答えます。

さらに、ティールは未来に対する進歩を「垂直的/集中的進歩」と「水平的/拡張的進歩」に分けて考えます。

  • 垂直的/集中的進歩:0 to 1、テクノロジー、新しい何かを行うこと
  • 水平的/拡張的進歩:1 to n、グローバリゼーション、成功例をコピーすること

ティールは、先進国をdeveloped、途上国をdevelopingと形容することに対して、実は先進国も発展する余地が大いにあると指摘します。

先ほどの逆説的な質問への僕自身の答えは、「ほとんどの人はグローバリゼーションが世界の未来を左右すると思っているけれど、実はテクノロジーの方がはるかに重要だ」というものだ。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第一章「僕たちは未来を創ることができるか」

こうした新しいテクノロジーを生み出すのは、だいたいベンチャー企業、スタートアップであるとティールは言います。その理由として、「大組織の中で新しいものは開発しづらく、一人ではさらに難しいからだ(引用)」と説明します。少人数は、迅速に動けることと、考えるスペースがある点で大組織より有利であり、一人ではできないような産業の創造ができる点が、スタートアップの利点なのです。

今までにないビジネスを始めるうえで、知識の羅列やマニュアルは不要であり、ゼロから考える訓練が重要であることから、「スタートアップ思考」を養うための補助線として、「ZERO to ONE」は問うべきことと答えるべきことを提示しています。

アンチ・リーン・スタートアップ

ティールは、2000年のドットコム・バブルの崩壊からシリコンバレーの起業家が得た4つの教訓が、現代のビジネスの前提にあるといいます。

  1. 少しずつ段階的に前進すること
  2. 無駄なく柔軟であること
  3. ライバルのものを改良すること
  4. 販売ではなくプロダクトに集中すること

しかし、ティールは上の4つ(リーンスタートアップと呼ばれる手法)はスタートアップにおいては間違いであり、正しいのは下の4つであると断言します。

  1. 小さな違いを追いかけるより、大胆に賭けた方がいい
  2. 出来の悪い計画でも、ないよりはいい
  3. 競争の激しい市場では収益が消失する
  4. 販売はプロダクトと同じくらい大切だ

僕たちは今も新たなテクノロジーを必要としているけれど、それを手に入れるには一九九九年的な尊大さと熱気が少しはあってもいいのかもしれない

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第二章「一九九九年のお祭り騒ぎ」

競争と独占

隠れた真実について、ビジネスに関するティールの質問は、次になります。

誰も築いていない、価値ある企業とはどんな企業だろう?

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第三章「幸福な企業はみなそれぞれに違う」

需要と供給が一致した「完全競争市場」では、利益が見込めると新規企業が参入して供給が増えて価格が下がるとともに利益もなくなり、一部の企業が撤退することで価格は元に戻ります。つまり、完全競争下では長期的な利益は見込めないのです。

一方、完全競争とは逆の独占状態では、企業は生産量と価格を自由に調節して、利益を最大化出来ます。この場合の独占企業は、他社と代えがきかないほど優れた企業と定義されます。検索事業領域におけるグーグルが好例です。

資本主義と競争は、実は対極にあることから、ティールは以下の起業家へのメッセージを発しています。

永続的な価値を創造してそれを取り込むためには、差別化のないコモディティ・ビジネスを行ってはならない

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第三章「幸福な企業はみなそれぞれに違う」

非独占企業は、さまざまな市場の交差点として自分たちの事業領域を差別化しようとするのに対し、独占企業は大きな市場の総和と定義づけて、独占的地位をカモフラージュしている、とティールは独占企業か否かを見分けるヒントを投げかけます。

また、競争は企業にとってイデオロギーとなってしまう危険性と、競争の破壊的な力と認識することの重要性を指摘します。

今日のシリコンバレーで、人付き合いの極端に苦手なアスペルガー気味の人間が有利に見えるのは、ひとつにこうした模倣競争が不毛だからだろう。空気を読めない人間は、周囲の人と同じことをしようとは思わない。ものづくりやプログラミングの好きな人は、ひとり淡々とそれに熱中し、卓越した技能を自然に身につける。そのスキルを使う時、普通の人と違ってあまり自分の信念を曲げることもない。だから、わかりやすい成功につられて周囲の大勢との競争にとらわれることもない。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第四章「イデオロギーとしての競争」

独占企業の特徴

現在価値ではなく将来価値を査定されるスタートアップにとって、遠い未来に大きなキャッシュフローを生み出すかどうかを見極める指標として、ティールは次の4つを挙げています。

  1. プロプライエタリ・テクノロジー:ビジネスの核となる技術の優位性(独占企業は二番手より10倍優れている必要がある)
  2. ネットワーク効果:利用者の数が増えることで、爆発的に価値が高まるモデル(逆説的だが、小さい市場から開拓すべき)
  3. 規模の経済:ソフトウェアは販売増加に関わる限界費用がゼロに近いため、販売増加により開発費など固定費を分散できる
  4. ブランディング:アップルの顧客体験や広告戦略などのブランドは巧みだが、本当は製品自体の高性能さに支えられている

この4つを意識しながら、最初は小さい市場から開拓する重要性を述べています。

どんなスタートアップも非常に小さな市場から始めるべきだ。失敗するなら、小さすぎて失敗する方がいい。理由は単純だ。大きな市場よりも小さな市場の方が支配しやすいからだ。最初の市場が大きすぎるかもしれないと感じたら、間違いなく大きいと思った方がいい。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第五章「終盤を制する」

さらに、ファースト・ムーバー・アドバンテージ、先行者利益に対し、ティールはラスト・ムーバー・アドバンテージの方がはるかにいいと主張します。

先手を打つのは手段であって、目的ではない。本当に大切なのは将来のキャッシュフローを生み出すことであって、君が最初の参入者になっても、ライバルがやってきてその座を奪われたら意味がない。最後の参入者になる方がはるかにいいーつまり、特定の市場で一番最後に大きく発展して、その後何年、何十年と独占的利益を享受するほうがいいということだ。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第五章「終盤を制する」

スタートアップのインテリジェント・デザイン

終盤を制するということは、あらかじめ企業の歴史を描いてから起業するということになります。リーン・スタートアップのダーウィン主義的アプローチは「曖昧な楽観主義」に基づくものであり、計画のないままで成功しようとすることの奇妙さをティールは指摘します。未来をコントロールできるかという疑問に対し、未来に対する捉え方を2つの要素で整理します。

  • 明確/曖昧
  • 楽観主義/悲観主義

2つの要素の掛け合わせについて、哲学的な背景や、代表的な国と年代は次のようになるといいます。

  1. 明確な楽観主義:1950-1960年代のアメリカ、ヘーゲル/マルクス、投資傾向は高く、貯蓄は低い
  2. 曖昧な楽観主義:1982-2010年代のアメリカ、ノージック/ロールズ、投資傾向も低く、貯蓄も低い
  3. 明確な悲観主義:現在の中国、プラトン/アリストテレス、投資傾向が高く、貯蓄も高い
  4. 曖昧な悲観主義:現在のヨーロッパ、エピクロス/ルクレティウス、投資傾向が低く、貯蓄は高い

ティールは、明確な未来を思い描きながら、貯蓄の少ない貧しい状況でも楽観的に投資していた1950-1960年代のアメリカの積極的姿勢を取り入れることが、スタートアップにとって重要だといいます。これは、バイオテクノロジースタートアップがソフトウェアスタートアップに比べて成功しにくい理由が、規制や参入障壁の有無よりも、生物に対する曖昧な考え方による悪影響が大きいという指摘と関連します。

  • バイオテクノロジースタートアップ:曖昧な楽観主義、自然、コントロール不可能な生物、理解度は低い、コストは高い
  • ソフトウェアスタートアップ:明確な楽観主義、人工、完全に定義されたコード、理解度は高い、コストは低い

欧米社会が明確な未来を描けるようになるには、文化的な革命が必要であると結論づけ、ティールは次のように述べます。

起業は、君が確実にコントロールできる、何よりも大きな試みだ。起業家は人生の手綱を握るだけでなく、小さくても大切な世界の一部を支配することができる。それは「偶然」という不公平な暴君を拒絶することから始まる。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第六章「人生は宝くじじゃない」

スタートアップの〈べき乗則〉

明確な楽観主義に基づいて、独占企業を築き上げることは、「指数関数的に成長した一社ががすべての会社に勝る」という〈べき乗則〉の考え方に繋がります。一方、投資する側、とりわけベンチャーキャピタルの隠れた真実は、最も成功した投資が他のすべての投資の合計リターンに匹敵する」ことだとして、ベンチャーキャピタルの2つの奇妙な鉄則に言及します。

  1. ファンド全体のリターンを一社で叩き出す可能性のある企業だけに投資すること
  2. 第一の鉄則による縛りが厳しすぎて、それ以外の鉄則は設けられないということ

投資を受ける側、とりわけ起業を志す学生などにとって様々な種類の能力を獲得させて将来のリスクヘッジをさせようとする画一的な学校教育は、個人の人生のキャリアは用意には分散できないことから、幅広く学ぶことは得策ではなく、自分の得意なことに集中し、それが将来どれだけの価値を生み出すかを真剣に考えることをすすめ、ティールは次のアドバイスします。

スタートアップの世界に関して言えば、たとえ君が非凡な才能を持っていたとしても、必ずしも起業がベストとは限らない。今は、起業する人が多すぎる。べき乗則を理解している人なら、ベンチャーを立ち上げることに躊躇するはずだ。成長の著しい超優良企業に入社すれば、破格の成功を手に入れられることを彼らは知っている。べき乗則のもとでは、企業間の違いは企業内の役割の違いよりもはるかに大きい。自分のスタートアップをすべて自己資金でまかなえば100パーセント株主になれるけど、もし失敗すればすべてを失う。だけど、グーグルの0.01パーセントを所有するだけで、信じられないほどの価値を保有できる。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第七章「金の流れを追え」

未知との遭遇を阻むもの

ティールは、現代における問題を三種類に分類して整理します。

  • 易しい問題:技術的に容易で、解く価値がない
  • 難しい問題:技術的に難しく、解く価値がある
  • 不可能な問題:技術で解決できず、価値がない

難しい問題は、未知の領域、すなわち人類にとってのフロンティアにある一方、そのような未踏への挑戦を阻むものとして、ティールは以下の5つを挙げます。

  • 物理的なフロンティアの消滅:海底深くを除くと、探検家の行くべき場所は乏しい
  • 漸進主義:少しずつ進むことを良しとする姿勢は、新たな分野への挑戦に至らない
  • リスク回避:隠れた真実、つまり主流が認めていないことを信じることが怖くなる
  • 現状への満足:エリートであることに安心すると、かえって人生は安泰でなくなる
  • フラット化:グローバリゼーションによる競争の激化を恐れると何もできなくなる

こうした障壁を乗り越えるために、ティールはヒントを示唆しています。

秘密を探すべき最良の場所は、ほかに誰も見ていない場所だ。ほとんどの人は教えられた範囲でものごとを考える。学校教育の目的は社会全般に受け入れられた知識を教えることだ。であれば、こう考えるといいー学校教育で教わらない重要な領域が存在するだろうか?

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第八章「隠れた真実」

そして、隠れた真実を見つけたときに話を打ち明ける相手として、組織としての企業があるとティールは主張します。

永遠に続く「起業の瞬間」

終盤を制することが重要な一方で、起業において最初のメンバー間の関係性が重要であることについてティールの友人たちは「ティールの法則」と呼んでいるそうです。「創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない」という法則です。

はじめに判断を間違うと、たとえばパートナー選びに失敗したり、出来ない人間を雇ってしまったりすると、あとでなかなか修正できるものではない。破産の瀬戸際まで追い詰められない限り、誰もそれを正そうとしない。創業者の第一の仕事は、いちばんはじめにやるべきことを正しく行うことだ。土台に欠陥があっては、偉大な企業を築くことはできない。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第九章「ティールの法則」

企業内の不一致を防ぐ方法として、創業時に「所有・経営・統治」の3つの役割を明確に区別して、それぞれの関わっている人の関係性が良好かどうかをチェックすることが有効だとティールはいいます。スタートアップにおける人材採用について、ティールは一般論として、社内での不一致を少なくするため、社員はフルタイムでなければならないとも言います。

このような関係性を意識したうえで、創業時の姿勢をブレずに追求する、新しいものを想像し続けている状態の企業の場合、「起業の瞬間」を永遠に引き伸ばしているようなものであるとティールは肯定的に捉えています。

教条主義とニヒリズムの間

ティールは、組織のあり方を考えるうえで、スタートアップは教条主義とニヒリズムの中間であり、教条主義寄りに位置すると指摘します。

同質性の高い集団において、家族を無視し、外界を遮断する一方、強い仲間意識で結ばれて、「真実」を目指す教条主義的な態度は、ときに重要な点を間違って盲信してしまうこともあります。一方、教条主義の対極として、組織に使命感がなく、長期的な関係性を築けない組織はニヒリズムに陥っています。これらの文脈に基づき、ティールは以下のように語っています。

成功するスタートアップは、外の人が見逃していることを正しく信奉している。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第十章「マフィアの力学」

おたくvs営業

良い製品を作れば売れると考える技術者と、良い製品を作っても売り方次第で売れないと考える営業マンは、どちらの考えが正しいのでしょうか。ティールは、前者がセールスの大変さを十分に理解せず、経済学における「経路依存性」を軽視した、誤った考えであると退けます。一方、後者が優れているかどうかは営業に見えない売り込みができるかどうかにかかっていると指摘します。

  • 顧客生産価値(CLV:Customer Lifetime Value)
  • 顧客獲得費用(CAC:CustomerAquisition Cost )

以上の2つの指標については、CLVがCACを上回ることが事業で収益を挙げる条件であり、ターゲットに応じた以下のような販売手法、CAC、ターゲットの組み合わせに応じた戦略を考えることが重要だといいます。

  • バイラル・マーケティング、$1、消費者
  • マーケティング、$100、消費者
  • セールス、$10000、企業
  • コンプレックスセールス、$10 million

興味深いのは、CACが$100と$10000の間には販売戦略上のボトルネックとなるデッドゾーンがあるという指摘です。

個人のセールス(当然、営業マンが必要になる)と従来の広告宣伝(営業マンは必要ない)の間には、デッドゾーンがある。たとえば、コンビニのオーナー向けに在庫と発注管理のソフトウェアを作ったとしよう。ソフトウェアの利用料が1000$だとすると、見込み客の中小企業にそれを売り込む有効な販売チャネルはないようだ。その商品に明らかに価格以上の価値があるとしても、それをどう伝えればいいだろう?広告宣伝は範囲が広すぎるか、効率が悪すぎる。対人セールスが必要だとしても、単価を考えると見込み客のすべてに営業マンを訪問させる余裕はない。大企業にとっては当たり前のツールを中小企業が使わないのは、そうした理由からだ。中小企業オーナーが遅れているわけでも、ツールが存在しないわけでもない。販売は隠れたボトルネックなのだ。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第十一章「それを作れば、みんなやってくる?」

機械と人間の補完的な関係

ティールは機械と人間の対比を労働力の供給という観点からテクノロジー(0 to 1)とグローバリゼーション(1 to n)の対比に還元して整理します。

このとき、人工知能の発展など、人間の存在価値が将来的になくなってしまうのではないかという技術への不安感について、機械と人間が補い合う領域が重要になると指摘します。

人間の能力を要素に分解することで、人間の代わりに作業を処理する機械学習技術は確かに優秀であるものの、大量のデータから人間の行動につながるような分析ができる段階にはないなどの理由から、ティールは以下のように主張します。

最も価値のある未来の企業は、コンピュータだけでどんな問題を解決できるかとは問わないはずだ。人間が難しい問題を解決するのをコンピュータがどう助けられるだろうかと考えるだろう。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第十二章「人間と機械」

ビジネスで重要な7つの疑問

ティールは、0 to 1を理解するための具体例として、エネルギー産業について取り上げます。その議論において、以下の7つの疑問に答えられるかどうかが、スタートアップの成功するかどうかを左右すると主張します。

  1. エンジニアリング:段階的な改善ではなく、ブレークスルーとなる技術を開発できるだろうか?
  2. タイミング:このビジネスを始めるのに、今が適切なタイミングか?
  3. 独占:大きなシェアがとれるような小さな市場から始めているか?
  4. 人材:正しいチーム作りができているか?
  5. 販売:プロダクトを作るだけでなく、それを届ける方法があるか?
  6. 永続性:この先10年、20年と生き残れるポジショニングができているか?
  7. 隠れた真実:他社が気づいていない、独自のチャンスを見つけているか?

どの業界かにかかわらず、この質問のすべてに答えるのが優れたビジネスプランだ。もしきちんとした答えがないのなら、君は度重なる「不運」に見まわれて、会社は破綻するだろう。7つの質問にすべてにしっかりと答えられれば、運に恵まれ成功するに違いない。5つか6つに答えるだけでも大丈夫だろう。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第十二章「エネルギー2.0」

創業者の極端な個性

ティールは、一般的な人間の個性について、本来は両端の特徴が以下で分類される正規分布のような比率になると考えます。

社会的に望ましいとみなされやすい性質

  • 強い
  • アスリート
  • 博学
  • カリスマ
  • インサイダー
  • リッチ
  • ヒーロー
  • 有名

社会的に望ましくないとみなされやすい性質

  • 弱い
  • おたく
  • サヴァン症候群
  • 付き合いにくい
  • アウトサイダー
  • 貧乏
  • 悪党
  • 評判が悪い

しかし、ティールは、創業者の人格的な特徴は、両方の性質を兼ね備えているパラドックスにあると指摘します。

もともと周囲と性質の違う人間が、その極端な資質を育てた結果、本人が大げさに誇張し、周りも大げさに誇張することで、ますます周囲と違う性質を強化するサイクルが存在する可能性に触れつつ、スティーブ・ジョブズが率いていた頃の独裁的なリーダーによる封建君主的な体制で成功したアップルを個性のない官僚組織と比較し、ティールは創業者と周囲の人々に対し以下のようにアドバイスします。

企業は、人々が創業者を必要としていることを自覚しなければならない。だから、創業者の偏屈さや極端さにもっと寛容になるべきだ。単なる漸進主義を超えて会社を導くことのできる非凡な人物を、僕たちは必要としている。創業者は、個人の栄光と称賛はつねに汚名と恥辱と背中合わせであり、慎重さが求められることを自覚しなければならない。何よりも、自分の力を個人のものだと過信してはならない。偉大な創業者は、彼ら自身の仕事に価値があるから重要なのではなく、社員みんなから最高の力を引き出せるから重要なのだ。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、第十四章「創業者のパラドックス」

人類の未来に関する4つのシナリオ

ティールは著書の最後で、哲学者のニック・ボストロムによる人類の未来予想として4つのシナリオを紹介します。

  • 繰り返される衰退:進歩と停滞を繰り返す
  • プラトー:技術の進歩が横ばいに近づいていく
  • 絶滅:人類が生き残れない、凄惨な最期になる
  • テイクオフ:素晴らしい未来に向かって飛び立つ

未来学者のレイ・カーツワイルが言うように「シンギュラリティは近い」のかもしれませんが、そんな中でも私たちにできることは「自分の頭で考えて、今までにない新しい何かを作ること」だと読者を鼓舞して、ティールは筆を置いています。

宇宙規模のシンギュラリティを達成できるかどうかよりも、僕たちが目の前のチャンスをつかんで仕事と人生において新しいことを行うかどうかの方がよっぽど大切だ。(中略)今僕たちにできるのは、新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、よりよい未来を創ることーつまりゼロから1を生み出すことだ。

ピーター ティール「ZERO to ONE」、おわりに

補足:全体レビュー後の感想

以上の内容は、本「ZERO to ONE」の重要な部分をまとめたものになりますが、全体レビューをしてみた感想としては、まず一般的な経営学の本では語られないような主張が展開していることに驚かされるということです。

例えば、基本的なビジネス書ではいかに競争に勝つために差別化するかを考えていくわけですが、ティールはそもそも差別化しないといけないような競争戦略をしてしまう時点で、スタートアップの戦略としては利益が消失すると警告する観点です。

確かに、現在のオンラインプラットフォームで覇権を握っている企業は、市場全体での存在感が強く、差別化などしていると思えない圧倒的クオリティのサービスを提供しています。

さらに、創業者の個性や、人材採用などの組織や人間に対する観点でも、ティールの見解は明確な楽観主義に基づいた、普通では考えないような極端なレベルを想像して、ギリギリの線を攻めている印象を受けました。

弊社(エスクリップ)のようなリスクを最小限に抑えたスモールビジネスには全く当てはまらない主張のオンパレードです。

しかし、何か新しいものを創るためには、現代では誰も信じていないような「隠れた真実」を見抜くことで、思いもよらないより良い未来の実現につながるという思想が「明確な楽観主義」と相まって、非常に参考になりました。

なお、本を通読するともっといろいろな発見があると思いますので、本に興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。

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